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蟹澤聰史『石と人間の歴史-地の恵みと文化』 [本]

 人間と石の関係を250万年前の石器時代に遡って解いてます。

石と人間の歴史―地の恵みと文化 (中公新書)

石と人間の歴史―地の恵みと文化 (中公新書)

  • 作者: 蟹澤 聰史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 単行本

 石について、アリストテレスの弟子のテオフラストス、ギリシアの地理学者ストラボン、ローマ提督大プリニウスに触れています。岩石の成因をめぐる大論争。《水成論》と《火成論》。ゲーテやノヴァーリスも《水成論》を支持していたとのこと。
 ドロドロに溶けた地球が冷え、現在に至り着くのに、どれほどの年月がかかったのかを、19世紀終わりにイギリスの物理学者ウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)が熱伝導方程式を応用して、時間計算をした、という着想は面白かった。

 「古生代の終わり頃にはパンゲアが存在していた。パンゲアとは、現在の南半球にある南アメリカ、南極、オーストラリアなどの諸大陸、およびアラビア、インドからなるゴンドワナ大陸、さらに現在の北半球に分布するアジア、ヨーロッパのユーラシアと北アメリカなどからなるローラシア大陸が合体した超大陸である。」

 大理石の産出するイタリアの地方で、ヴェネツィア北方のカルニア地方の淡赤~ベージュ色、トリノの西方ドラ・マイラ地域の白地に青の大理石(マルミ・チポッリーニ)、シエナ地域の白大理石、トスカーナ地方の「ビアンコ・カッラーラ」の美しい白。石灰岩や大理石が地下水によって溶け、ふたたび沈殿し、硬化したものをトラバーチンと呼ぶ。現在も堆積しつつある大規模トラバーチンは、中国四川省の九寨溝や、トルコのパムッカレ。

 ローマ時代の水道橋に使われた花崗岩。この技術はイタリアのみならずトルコ(ヴァレンス)、フランス(ポン・デュ・ガール)、スペイン(セゴビア)などに見られるといいます。とくにセゴビアは、ディズニー映画『白雪姫』の舞台古城アルカサルのあった場所。また、スペイン内戦の戦場になった場所で、ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』もその経験が書かれたものだという。
 エジプトのアスワン花崗岩は、ヒエログリフ解読の端緒となったロゼッタ・ストーンでも有名。また、モーツァルトの『魔笛』の歌劇の舞台は、エジプト。セリフにエジプトの神イシスやオシリスがしばしば登場する。モーツァルトで取りざたされるフリーメーソンがらみで、フリーメーソンリー(「自由な石工」を語源とする)と関係があるといいます。
 さらに、モンゴルのアマゾナイト花崗岩では、「亀趺(きふ)」という亀の形に彫られた、碑の台座があり、中国や朝鮮半島にも見られるものらしい。

 そして、「万里の長城」。地域によって建設方法も材質も異なっているといいます。5000キロにおよぶ長城を築いた秦の始皇帝は統一後15年で滅びたが、それは北方からの外敵侵入のためではなく、権力闘争や漢民族同士の抗争によってだといわれる。晩唐の詩人胡曽の「長城」を紹介しています。

 旧約聖書「出エジプト記」にあるエルサレムの祭司の胸当てを飾る12個の宝石、「エゼキエル書」「ヨハネの黙示録」にもそれぞれ12種類の宝石を記されているが、宝石に関する12の数について、占星術の横道12宮、12使徒、イスラエルの12部族の名と諸説があるらしい。
 宝石でダイヤモンドは、私たちの地表の条件では不安定な物質で、安定した状態にするには、常温で2~3万気圧くらい!が必要だといいます。

 石について、地質学的なとらえ方にと止まらず、人間とのかかわりを文学ほか、豊かな視点でとらえています。説得力があります。


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