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読書についての二冊の本 [本]

 まず、一冊目に、日高義博『読書と人生』から、「人生にとって本は何のためにあるのか」というテーマを投げかけています。

読書と人生―刑法学者による百学百話 (SI Libretto)

読書と人生―刑法学者による百学百話 (SI Libretto)

  • 作者: 日高 義博
  • 出版社/メーカー: 専修大学出版局
  • 発売日: 2011/08
  • メディア: 新書

そして空海の『秘蔵宝鑰』から、万巻の書物や先哲の口伝に思索をすめていく大切さを説きおこしてています。
 書物を読むのに、四つの段階があると『本を読む本』からしめします。

・・・最初の段階は、知らないことを知る楽しさが分かるものです。読書の第二段階は、娯楽としての楽しみを得るもの、あるいは知識を得るためのものです。第三段階は、考えるための読書です。そして第四段階の読書が、行動の指針、あるいは人間の生き方のためのものです。

 この最後の段階は、『論語』にもある、本はただ読むだけでなく、行動に結びつけるところまで行って、読んだということになる・・・知ったことを実践する大切さ(知行一致)までが、語られます。
小学生、中学生、高校生、大学生・・・時代に過ごした読書を振り返ります。

 途中、『万葉集』から一首(東歌三三七八番)「武蔵野国入間郡」をとりあげ、お菓子屋「かにや」の包装紙に書かれた歌を、味わい深く解釈してくれています。人生を振り返って読書(歴)をとらえ返した、刑法学者日高氏の読書です。


次に、鷲田小彌太『定年と読書』

【文庫】 定年と読書 知的生き方をめざす発想と方法 (文芸社文庫)

【文庫】 定年と読書 知的生き方をめざす発想と方法 (文芸社文庫)

  • 作者: 鷲田 小彌太
  • 出版社/メーカー: 文芸社
  • 発売日: 2011/02/05
  • メディア: 文庫

少年、青年、そして壮年時代には「かぎり」がある。ところが、・・・老年期には「かぎり」がない、と説きおこしてます。

 大学院に入って、私ははじめて「聖典」をもった。信奉するだけではなく、それを理解し、解説できなければならない書物である。この聖典と知的かつ批判的な関係を結ぶ、それが私のとった態度であった。
・・・聖典をよく理解し、うまく解説できることは、聖典が無条件で通用する世界では、とても重要なことであった。

 書物には、正しい認識に導くものと、そうでないものとがある。一冊の書物にも、一人の著者にも、正しさと誤謬とが混在している。その点で、書物にかぎらず、何しろ鵜呑みにするのは危険である。
 しかし、真と偽を見分ける能力も、事実を丹念に見るだけでは身につかない。書物を読み、さまざまな意見を吟味し、自分で考えることを通じて、つけるしかない。これは、料理を味わう、音楽を聴く場合と同じことである。読書力であり、読解力である。

 定年後、本を読まなくなるのは、決定的である。知的な世界が丸ごと消失する危険がある、と考えていい。そして、自分の狭い殻に閉じこもって、自分の「趣味」に合わない世界に不満を持ち、その世界を呪う程度で終わってしまう。なんてつまらないことだろう。

これは、アルファ読みやベータ読みを考えた、外山滋比古『「読み」の整理学』を思い出します。

私は、毎年、今年はこの作家を読もう、という計画を立てる。

谷沢永一という人物の紹介は、少し興味をひいたので、機会があれば読んでみようとおもいました。

 私は、聖典と呼ばれる絶対的な書物ほど、一方では、教条といっていいほどの読み方(コピーを使わず筆写する、もっと極端には、覚えたら覚えたページを喰うというエピソードまで)があり、他方では、亜流を含め無限の解釈が生まれるものだ、とおもいます。
 リビアでは『緑の書』は聖典として教育されたのだろうが、カダフィの後は、どうなるのだろう。
 書物は、護教的な師がいて、こう解釈すべきである、と公定されるべきものか。その場合、社会的には動員的な、知行一致が重視される。先達の知、本の絶対性とは、実は人の愚昧性と一体かもしれません。
 それとも、鷲田氏が言うとおり、読書とは、料理や音楽と同じで、同じ時に同じ部屋にいたとしても、まったく個人の感性による体験、と考えるか。知るとは個人の体験としてのみ獲得される(知行一致のもう一つのあり方)ものであると考えるべきか。同時に、それはその人にとっての真実、異端の解釈を寛容することができなくてはならない。万葉集の歌のように・・・。


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